本文

市長の部屋

熱い思いを胸に

1603-1.jpg「風の匂いで春が近づいて来ているのがわかるんだ」と言う友人がいたのを覚えています。彼が同級生ということもあって、若い頃は「気障なことを言う男だなぁ」と思っていました。私も、その頃はまだ俳句にも興味がなかったし、学生運動の殺伐とした時代だったので気付かなかったのでしょう。還暦に近くなる頃から、自然と人間の距離感を考えるようになり、友人が言っていたことが何となくわかるようになりました。2月から春の訪れが始まり、3月下旬から4月が春本番なので、頬を撫でる風にそれを感じることになります。

1603-2.jpg 下手な囀りの鶯が梅の枝に見えたかと思うと、まもなく梅の花が咲き始めます。土手の黄色や白い水仙の花が、清楚な美しさを見せてくれたのが先月までのことで、3月に入ると梅も盛りを過ぎて散り始めています。桃の花が派手をとるかと思えば、河津桜のような早咲きの桜の便りが聞かれ、桜前線の北上が話題になりはじめます。このように、春を感じるのは視覚的な花によってもたらされるのが一般的と思います。友人が言うような匂いによって感じる春とは、視覚による花の認識が、匂いの記憶として転換されていたのでしょう。"光の春"2月、"匂いの春"3月ということでしょうか。

1603-3.jpg 花だけでなく大地から発する匂いも、冬には感じなかったものが確かにあります。野焼きや堆肥の匂いなど、田舎特有の懐かしさがあります。自然とともに暮らす人間の五感の素晴らしさです。昨年の3月を振り返ってみますと、光や匂いに春を感じるようなことを忘れていたかのような惜別の3月でした。それは、50年前に卒業した母校の中学校が閉校するという歴史的な3月でした。同級生も全国各地から帰省し、しばしの再会の同窓会や閉校式典をともに過ごしながら、現実の春を感じるのではなく、50年前の春を懐かしむ3月となったのでした。あれから1年が過ぎました。そして21日に新生「大口中央中学校」の第1回卒業式が行われます。

1603-4.jpg 元鹿児島県教育長 濱里忠宜先生に作詞いただいた'♪北の大地、伊佐の大地・・・ああ新しき 十五の旅路'と歌われる校歌を、初めて卒業式で聞くことになります。今は故人となられた濱里先生に、新しい校歌をお願いできたのは私の大切な思い出です。先生が、自分の死期を感じておられたことを後に知ることになり、先生は遺作となることを覚悟の上で書かれた校歌だったのではないでしょうか。京都大学哲学科を卒業されて、家庭の事情から鹿児島県教員として人生が始まり、最後に懐かしくも思い出深い伊佐市の新生中学校の校歌が遺作となりました。その先生が教育にかけられた熱い思いを、生徒たちが感じてくれることを願っています。

1603-5.jpg 校歌というものは大切なもので、落ち込んだ時や、逆に気持ちを奮い立たせたい時に勇気を与えてくれます。先月の鹿児島県下一周駅伝大会で、チームの監察車から校歌でランナーを励ます場面がありました。マラソンと違い、駅伝はチーム一丸となって襷を繋ぎます。学校がまとまるのも、校訓や校歌があるおかげだと思います。個人的なことですが、朝のウォーキングでは、卒業後50年を経た中学校と高校の校歌を、今でも大きな声で大空や四方の山々に向かって歌います。50年経っても、たとえ母校が無くなっても、私の胸にはまだまだ熱いものが残っています。先月、大口高校から九州大学に一名合格したニュースを聞いた翌朝の校歌は、格別のものでした。

1603-6.jpg 議会も先月26日に開会しました。日程は7~9日が一般質問、11日に総括質疑、各委員会開催の後は25日が最終本会議です。一般会計の予算を1757千万円(前年比:0.4%減)とし、地方創生関連の事業や予算も100事業・約26億円が含まれています。キーワードは、「人口」・「教育」・「産業」・「健康()」・「安心」を掲げています。議会冒頭で述べる施政方針演説も、上記の5つのキーワードに添って先月26日に説明いたしました。現代を幕末と仮想して、江戸時代最後の約50年間に思いを馳せ、二宮尊徳の活動や哲学から学ぶべきものがあることを施政方針のまとめとしました。国が幕政改革の最中でも、荒廃した村々のそれぞれに合った復興策を実行したのが二宮尊徳でした。

1603-7.jpg 原文から引用すれば、「至誠を本とし、勤労を主とし、分度を体とし、推譲を用とす」とあります。「それ我道は人々の心の荒蕪を開くを本意とす。心の荒蕪一人開くる時は、地の荒蕪は何万町あるも憂るにたらざるが故なり」とも書き記しています。人々の心を開拓するのが本意であり、そうすれば荒地が何haあろうが心配することはない、というのであります。国が打ち出す政策をうまく使うことも必要なことです。しかしながら、時流に乗ることだけに目を奪われ、身の丈に合わないことや将来展望の不透明さには警戒しなければなりません。二宮尊徳の教えるものを、現代の地方自治体の地方創生に生かさなければならないと思います。

1603-8.jpg 一昨年11月に大口高校支援の基金を創設して、初めて九州大学に男子生徒が合格しました。喜びの中での卒業式になります。大口高校、伊佐農林高校は1日、大口明光学園高校は3日に卒業式が行われます。准看護学校の卒業式が2日、大口中央中学校、菱刈中学校、大口明光学園中学校の卒業式は15日です。市内小学校の卒業式は24日に予定されています。未来へ向けて新しい歴史の始まりです。菱刈小学校新校舎の完成も未来への始まりです。2日に記念式典が行われます。歴史の継続として、西之表市との姉妹都市交流記念誌完成発表会に6日は出張します。12日開催の大口ロータリークラブ40周年記念式典も、これまでの活動の大きな成果でありましょう。

1603-9.jpg 春を呼ぶイベントや活動が連続する、弥生3月を満喫していただきたいと思います。第6回の伊佐のひな祭り・福かざりを、1日~6日まで大口・菱刈商店街でご覧いただけます。針持コミュニティーの針持青少年センターでも、コミュニティーの皆さんの創作ひな人形を楽しむことができます。大口商店街では、12日・13日に春の市も開催されますので、福かざりと合わせて春を満喫してください。13日に本城地区集会施設で第12回本城おきな草春まつり、同じく13日に針持青少年センターで秀吉の道「ウォークin針持」、20日に田中ふるさと館を中心にウォークin田中、そして27日の忠元公園桜まつりをはじめとして、市内全域が桜満開の季節へと一気に伊佐の春は花開きます。皆様のお幸せをお祈りいたします。



1603-10.jpg魚影の映る川面の水温む

野に山に風に匂いの春便り

ひな祭りひとり月夜に酒を酌む

花に酔い人に酔うて眠る庭

恋猫も今日を最後に卒業す

今はなき母校に刻む卒業歌    


2016年02月29日