ひまわりの家の仲間たち

2024年03月29日

これが私の誇り かまど炊きの手作り味噌

 

8時、「ひまわりの家」の工房では、かまどに薪がくべられ、蒸籠(せいろ)に入った麦が炊かれはじめます。 焚き火とふつふつと蒸されていく麦の音に包まれながら、仲間たちは味噌作りの準備を始めます。

 

炊き立ての麦を取り上げると、工房内に蒸気が広がり真っ白に。蒸気に包まれながら、炊き立ての麦を混ぜていきます。

 

1日で仕込む麦の量は40kg。すべて手作業で行われます。

麦を混ぜる工程で温度を下げ、適温になったところで米麹を入れます。

温度は冷ましすぎず、高すぎず。

慎重に温度を測りながら、皆で連携しながらテキパキと仕事が進んでいきます。

麦に混ぜる米麹は自家栽培のお米を使って工房内で作っています。

この米麹が味噌作りの決め手となります。

蒸した米に麹菌を入れ、まんべんなく菌が行き渡るように混ぜて保温する工程が米麹仕込みの1日目です。

 

米麹作りのポイントは「温度」「湿度」「均等に混ぜること」の3つです。

特に大切なのが温度管理。

温度が低すぎると菌の発酵が進まず、高すぎると死滅してしまうためです。

「鹿児島の北海道」と呼ばれる伊佐市は盆地という地形の特徴から、冬はとても寒く、夏はとても暑い。1月、2月の季節は朝の最低気温がマイナス3~5℃という日も珍しくありません。朝は氷点下まで冷え込み、日中は気温が上がり、日が暮れると同時に突然寒くなるという寒暖差の大きい土地です。外気温の変化が大きい伊佐の土地では、温度管理がとても難しいのです。

「菌は生きています!がんばってね!!」と菌に声をかける仲間たち。

冬場は毛布にくるんだり、コタツを入れたり、室温を上げたりしながら、菌の力を引き出すべく試行錯誤。その時々の気温や天気と菌との対話が米麹作りの醍醐味でもあります。

米麹作りの2日目以降は10時間おきに米麹をよく混ぜます。

混ぜることで温度を調整、米のすみずみまで酸素が行き渡り、麹がまんべんなく発酵しやすくなります。

「どこまで菌を信じることができるかも大事です」と職員の方は話します。

 

 

生きている菌は毎回変化があり、毎日毎日成長していくので可愛く見えてくるそう。この米麹がかまど味噌の素となります

 

仲間たちは、「お客さまの喜ぶ顔が見たい。お客さまのことを第一に考えて作っています」 と話します。

 

米麹作りに4日間、さらに味噌作り本番は3日間に及びます。 こだわりである「かまど炊き」はガス火よりも火加減の調整が難しい。 

手間がかかって大変なのではないかと思いきや、みんな火の当番をしたがるのだそう。

 

「このかまどだから、いい!」 

と、皆さんかまどが大好きな様子。

 

火を見ると心が落ち着く。作り手自身が火に癒されながら味噌が作られているのです。 

かまどの火ならではのムラや、大豆のつぶつぶ感を残す昔ながらの製法が唯一無二の「かまど味噌」を生み出しています。

味噌作りに臨む仲間たちの目には働く喜びと美味しい味噌を作っているという自信がみなぎっています。

 

「どんな味わいになるのだろう?」 

仲間たちの味噌作りへの探究心は止まりません。いつでも同じ均一の味ではなく、季節や気候、天気や素材の状態で変化していく味わいが魅力です。 

夏や猛暑の中で火を扱い、冬は極寒の伊佐で毎日冷たい水仕事。 

食材を洗ったり、道具や食器、かまど、工房の掃除まで、寒さをものともせず最後まで手を抜きません。

徹底的に手作りにこだわった味噌作りは体力勝負の大仕事。

仲間たちの腕はまるでアスリートのようです。

 

働き方が多様化し、デジタル化や機械化が進み、身体的に大変な仕事を避ける人も珍しくない昨今、こんなに仕事が好き!という気力に満ち溢れた職場は珍しい。 

 

なぜ仲間たちはこんなにも楽しそうに誇りを持って働いているのでしょう? 

ひまわり福祉会の理事長・冨永あつ子さんにお話を伺いました。 

 

「ひまわり福祉会は、1998年に障がいのある子どもたちが自宅から通える職場を作ろうという親たちの活動から始まりました。当時は無認可の作業所でしたが、後に社会福祉法人の許可を取り、現在はワークプラザひまわりの家や、生活介護施設、グループホームなどを運営しています。」 

 

「働くことは人とつながり人格を形成する文化であると考えています。ひまわりの家の仲間たちは仕事が好きで、働くことに誇りを持っています。社会の一員として仕事をすること、友と共に職員と共に働く喜びを持ち、自分の楽しみのために仕事をする、それが彼らの生きがいとなり、自立につながっています。」 

 

「障がい児、障がい者の通える場を」 

カリスマ的なリーダーが引っ張っていくのではなく「みんなで協力」を決まり事とし、「話し合い・協議」を大切に今日まで歩んできました。 

自分の子どもを想う親たちの願いから始まったひまわり福祉会の活動は「みんなの願い」となり、地域が持っている力を引き出しています。 

 

2022年には製粉へのニーズが高まったことをキッカケに製粉工場を新しくし、2023年には新商品も開発しました。

 

 

曽木食彩かまどの手作り味噌は美味しい。 

大豆のつぶつぶ感、気候によって少しずつ変わる味わいに人の手のぬくもりを感じます。 

かまど炊きだから、手作りだから、美味しさの秘訣はたくさんあるでしょう。 

その中でも一番の秘訣は「美味しいと言ってもらいたい。」という仲間たちの想いと誇り、仕事に取り組むひたむきさなのかもしれません。 

 

誇りを持って働く場を作る、ひまわり福祉会のチャレンジは続きます。 

 

▼社会福祉法人ひまわり福祉会

 住所:鹿児島県伊佐市大口曽木1281番地

 電話:0995-25-1263

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鹿児島県伊佐市役所 地域振興課 コミュニティ活力推進係
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