収穫の喜びを、一杯の焼酎と味わう
2010年10月01日
伊佐盆地の最も美しい風景が広がっています。黄金色に染まる伊佐平野 です。今のところ台風もなく、適当な雨や地下水の豊富な水が稲田を潤してくれました。畦道の彼岸花がそろそろ盛りを過ぎて、稲穂はこれ以上垂れることができないほどの重さです。〝実るほど頭を垂れる稲穂かな〟、まさに伊佐の人柄・人情を表しているかのようです。朝日が昇り西の空が真っ赤に染まるまで、伊佐の田んぼの一枚一枚が刈り取られていきます。頭に例えると、最初は少しバリカンを入れた程度だったものが、後半になると阪神タイガースを思わせる虎刈り風、そして、丸坊主へと変わっていきます。夜空の星と月が静かに見守る中で、収穫の喜びを焼酎で分かち合うのも伊佐ならではのことでしょう。
風景としては申し分ない実りですが、米価の低落傾向が続きそうですので喜んでばかりもいられません。日本人が米を食べなくなったのが大きな原因で、長期の米価低迷が続いています。今年はそれに加えて政権交代での政策が裏目に出ています。所得補償を全農家にすることが打ち出されたために、商売する人の考えは、政府が補償するのだからその分だけは安く買ってもいいとの判断でしょうか、相場値が大幅に下落し始めています。一律全農家に補償をするとこのような思惑買いが起こります。努力する農家に努力の分だけ補償すればこのようなことは起こりにくい。相場というのは生き物ですか ら本当に怖い。一度落ちた米価は元の水準にはもう戻らないということを農家は知っています。
米を食べなくなった日本人は、祖国を”瑞穂の国”ともう呼べないのでは なかろうかと最近、思うようになりました。俳句も農耕民族であるがゆえに俳句として進化したような気がするのです。穀雨や芒種などが二十四節気にも入っています。美味しい米を作れば売れると信じて品種改良し、栽培技術も格段に向上しました。私たちの伊佐米はどこにも負けない美味しさですが、期待するほどの価格では売れません。知り合いへの贈り物は伊佐米が一番だと思い、ご縁のある方には宅急便でお届けしています。特に一度でも伊佐で暮らした転勤族の方々は、この美味しい味を覚えておられて、懐かしいのだそうです。伊佐のふるさと会や鹿児島県人会でも伊佐米は人気の的です。
消費を伸ばすためにはお米をご飯として食べるだけでなく、様々な料理や製品の素材として活用することも大切です。パンや麺を米粉から作るような研究も進んでいます。伊佐でも米粉の研究をしている会社があります。このような会社が自前で製粉プラントを建設できれば、この広い伊佐の田園はいくらでも原料を供給できるのにと思います。このようなプランがすぐに実現しないのは、米粉で作る加工品の販路や消費が小さいからだろうと思います。輸入品との価格差が大きいので、政府の補助でそれを補わなければなりません。農地はダムの代わりや環境保全の役割もあります。食糧自給率や食糧安保を考えるなら、政府のしっかりした施策や国民の理解が必要でしょう。
伊佐米を伊佐焼酎の発酵用麹米として使っていただくような企画を今年度から始めました。郡山八幡神社に宮大工の書いた日本最古の〝焼酎〟の文字を使った落書きがあるので、伊佐は〝焼酎のふるさと〟として多いにPRしています。伊佐米の麹で仕込む伊佐の焼酎はまさに本物の味です。新焼酎にご期待ください。秋の取り入れは西に陽が沈む間際まで続き、やがて家路につき、疲れを癒す一杯の焼酎はなんとも言えない美味しさです。神無月は神様が出雲に行かれて地元にはご不在ですので、少々の飲みすぎは許されるでしょう。ただし、明日の仕事と車の運転に支障のない程度にお願いします。九州市長会が鹿児島市で13日~15日開催されますので、〝伊佐錦〟〝伊佐美〟〝伊佐大泉〟を大いに飲んでもらいます。
10日の市民体育大会は市陸上競技場で開催しますが、それぞれの小学校 区ごとに陣取り、競技や応援合戦に大いに盛り上がります。この一週間前の3日が市内小学校の運動会(羽月北小は17日)です。私は市民体育大会の翌日11日に人吉市の東西コミュニティセンターで行われる人吉市との親善剣道大会に参加します。昨年は牛尾小体育館で行い、市長同士の大将戦は引き分けでした。今回は敵陣ですのでどうでしょうか、やってみないとわかりません。昨年初めて剣道をした私にとっては、知らない者の怖いもの知らずが、今年はちょっと違う感覚です。市民体育大会や剣道以外では、文化祭が30日と31日に伊佐市文化会館でありますし、福祉大会は31日大口ふれあいセンターで開催されますのでご来場いただきたいと思います。
映画「半次郎」は鹿児島での評判も良くて、東京・大阪・京都・愛知など が9日、東北などが11月13日から公開されます。皆さんのお近くの上映劇場情報などは、「半次郎」オフィシャルサイトをチェックしていただきたいと思います。2時間という時間の長さを感じさせない映画で、殺陣がすばらしい。映像の柔らかさと吉俣さんの音楽がレクイエムになっているのです。煙草やサツマイモ、月、論語、二人のツーショット写真等々・・、韻を踏んでいる小道具での表現 の 妙に気付くのも映画ファンの楽しみでしょう。あの時代と今の時代の生き方の価値観を、一人ひとりが考えながら見られる映画です。何回でも見たくなります。私はすでに4回見ましたし、これからも数回見るでしょう。ぜひご覧ください。
もののふに 惚れて独り身 〝さと〟の秋
香水の 色なき風に ただよへり
半次郎 義に生き義に死す 南州忌 (映画「半次郎」によせて)
神無月 白くなりても 残る月
大西日 黄金田染めし 日の暮るる
黄泉の国 流れる雲の 彼方かな -新ー
- こんな時には?