師走に思う 「一陽来復」
2010年12月01日
一年が過ぎるのは早いもので、師走の声を聞くだけであわただしく感じます。先月まではイベントをするにも本格的な感じがありましたが、師走のイベントにはどうしても駆け足感があります。とりあえず済ませておかなければと思ってしまいます。他にやり残したことはないかと気になりますが、この時期でないと見ることができないものに、鬼火焚きの櫓つくりがあります。本来、鬼火焚 きの櫓は正月の7日に作り、その夜焚いて厄病や悪霊を追い払う慣わしです。しかし、正月明けに仕事を始めると、なかなか昔のような余裕はありません。そこで、年内にあらかじめ作っておくということになりました。
今では伊佐市内のいくつもの集落で行われる行事になりました。私も今年は集落の青壮年部長ですので、リーダーとして12日に20名ぐらいの部員と一緒に作ります。その夜は青壮年部の忘年会で盛り上がるでしょう。市長であっても集落に帰れば一人の住民ですから、こうした役割も回ってきます。〝自助・共助・公助〟の’共助’にあたる自治会活動はとても大切なことです。今までは’公助’に頼りすぎたのが日本の社会でした。何でも行政がしたり、できた時代は過ぎ去りました。財政的にも厳しい時代になりました。近くに住む人々が助け合って暮らす時代に向かいつつあります。「人」の文字は支え合うような形になっています。
春・夏・秋・冬と四季の移ろいの中で多くのことを感じます。特に12月は一年の終わりで、寒いですので、感傷的にもなります。感傷的になったり寂しくなったりしないために、あわただしい雰囲気を表す漢字の〝師 走〟にしたのかもしれません。月が雲に隠れても、しばらくするとどこかに顔を見せます。星も朝には小さくなって遠くに消えますが、夜になれば満天の星空です。太陽は日の出前から東の空をオレンジ色に染めながら昇ってきますが、夕方には西の山際に静かに沈みます。12月は一年の終わりであっても次の一年の始まりです。月や星や太陽と同じく、暦も生々流転のような気がします。
今年を振り返り、様々なことを思い出します。一番大きかったのは宮崎県での口蹄疫発生でした。えびの市に飛び火して、防疫距離が10km以内に市の一部が入り、緊迫した状況もありました。4月28日から連休返上で市職員や畜産関係機関を総動員して、必死に24時間体制で各交通要所での消毒を行ったのが、その後の7月下旬まで長く続く防疫作業の始まりでした。その間には多くの方々のご協力をいただきましたが、中でも災害協定に基づく建設業組合のご協力は、防疫期間が長引いただけに本当に助かりました。この期間中のイベントが全て中止になり、再開されたのは8月に入ってからでした。口蹄疫の経済的影響は今でも尾を引いています。忘年会や年末大売出しはぜひとも地元商店街でお願いします。お互いに支え合いましょう。
9月に入り、榎木孝明さんの企画・主演による映画「半次郎」の上映が全国に先駆けて伊佐市文化会館からスタートしました。伊佐では2日間で5000人近い方々が見に来てくださいました。伊佐を中心に昨年の秋に多くのボランティアの協力やエキストラ出演などによりロケが行われ、私たちはこの日を胸はワクワクしながら待っていました。現在も鹿児島ミッテ10では上映中です。市ホームページのトップにある「映画半次郎」のポスターから榎木さんの「半次郎オフィシャルサイト」へアクセスして上映スケジュールなどご確認ください。今の時代だからこそ見てほしい作品ですし、いつの時代になっても不朽の名作として評価が高まると思います。〝道標を持たない若者たち 道標になれない大人たち〟は私たちへの大きなメッセージです。
もっとも特徴ある今年度の施策の一つが、定住促進のためにお試しに住んでいただく住宅提供です。4戸用意して5月からスタートし、次第に口コミやホームページ、県人会などで広まり始めました。世界的に有名なギタリストの松田晃演先生ご夫妻もそのお一人で、水の美味しい伊佐市をすっかり気に入っていただきました。慎重すぎる行政スタイルから大きな一歩を踏み出すのは勇気が必要ですが、新しい施策は議会のご理解を得ながら進めつつあります。地域振興は行政と議会と住民が一体となり、〝自助・ 共助・公助〟を基本に暮らしやすい地域の創造が安心や安全につながります。今後さらに外からの移住や定住の問い合わせが増えるものと思います。
安心・安全な暮らしやすさとともに経済活 動の活性化も大切なことで す。幸いに住友金属鉱山の菱刈鉱山が、世界的な金価格高騰の恩恵を受け好調です。来年には日本工営による小水力発電施設が曽木の滝にできます。農業関係が口蹄疫の影響や米など今後のTPP問題などで不安はありますが、地方都市や農業を主体とする自治体の悩みは一緒ですから、国や県へ対して意見や現場の実態をどしどし伝えていこうと思います。11月の収穫感謝としての伊佐ふるさとまつり、新納忠元公没後400年祭、名球会・OBドリームベースボール大会、曽木の滝もみじ祭り、湯之尾神社の奉納神舞など大きなイベントが全てお天気に恵まれ多く方にご参加いただき大盛況でした。
今年の前半は口蹄疫で苦しみましが、後半になって産業・文化・スポーツ・伝統行事などで盛り上がりました。今月の5日は伊佐市ふれあい駅伝大会です。市を縦断するコースをそれぞれの校区の選手が競います。19日には南日本10kロードレース通信競争大会が伊佐市陸上競技場近くで行われます。12日の生涯学習フェスタが大口ふれあいセンターでおこなわれ、いさのおんがくたいクリスマスコンサートが18日14時より伊佐市文化会館で行われます。クリスマスのイルミネーションが街角やご家庭の庭にも飾られるようになりました。水を張ったたんぼに大きなクリスマスツリーが輝いているところもあります。深い湖に吸い込まれるような錯覚を覚えます。今年の全てのことに感謝しつつ〝一陽来復〟を祈りたいと思います。
会うたびに友若く見ゆ同窓会
刺すがごと頬に痛き師走風
日めくりの最後の一枚去年今年
- こんな時には?