「風景は思想」~黄金色のまちから~
2011年09月30日
秋になったなぁ~と思うのは、やはり10月になったからでしょう。近年、温暖化の影響かどうかわかりませんが、残暑が長く続く傾向にあります。今年もそれが顕著でしたので、10月が来るのを待ちどおしいと感じた人が多いと思います。「こすもす」の花が風に揺れるのを見ていると、もの寂しさも感じますが、なかなか”折れない・倒れない”強さもあるように思えます。漢字で「秋桜」、片仮名で「コスモス」と、書き方でイメージがだいぶ違います。私の世代では、漢字の秋桜は山口百恵さんの有名な「♪秋桜」を思い出します。母と娘の情愛が見事に出ていました。
東日本大震災の被災地にも咲いているでしょう。それぞれの思いで見る秋桜に心が癒されると思います。日本のどこに住んでいてもコスモスは見ることができます。私たちはコスモスを見ることで、被災地への思いを新たにしたいものです。片仮名の「コスモス」は語感からして、宇宙を思い起こす人もいるでしょう。秋の空は高く、果てしなく続く宇宙そのものです。夕焼けも明日への準備をうながし、星や月を見るにつけても宇宙の神秘さに感動します。「こすもす」は被災地と私たちを繫ぐ言葉のような気がします。
首相が代わり、国会が開かれ、復旧・復興へ向けての議論が始まって良かったと思います。なかなかコトが進まなかったこの6か月を思うと、これからはスピードを上げてもらいたい。マスコミやインターネットで知っている情報以外に、多くの変化が被災地では起きています。政治家や官僚は原則論ばかり振りかざさないで、臨機応変に被災者・被災地に寄り添った施策を展開してほしい。台風豪雨の被災地も同様に厳しい状態です。”第二の戦後”と言われても、被災地だけがそうであってはいけないと思います。全ての国民が第二の戦後を共有する覚悟が必要です。
10月は伊佐にとっては稲の収穫を迎える最も重要な月なので、台風には敏感になります。精魂こめて育てた稲が見事な黄金色に輝いています。伊佐盆地のこの景色は”絶景”と言えます。国道の3か所の入口に大きな看板があります。一面全てが黄金色の水田と青い空。まるで自然の中に吸い込まれていきそうです。93歳の画家、堀文子さんがテレビの対談番組で話された言葉が忘れられません。「風景は思想である」という言葉に感銘を受けました。ヨーロッパに住んでいると、街角や田園の中からレオナルド・ダ・ビンチやベートーベンが出てくるような気がするそうです。
日本の街角でそのような感じを持てるでしょうか。伊佐の田園風景はすばらしい。海音寺潮五郎先生の伊佐を舞台にした小説、「二本の銀杏」の源昌房やお国さんが曽木の滝や旧家で会えるような気もします。風景を作ってきたのは時代ではなく人であるはずです。ひとつの風景には、その時代を生きた人々の思想が反映されているということでしょう。近代科学文明により、街も田園も住みやすいように変化してきました。それでも歴史上の人物がいきなり出てくるような風景あるとすれば、そこには民族としての確固たるアイデンティティが引き継がれているということではないでしょうか。
すばらしい田園風景や森林の恵みを残しながら、暮らす人々の安心や安全を第一に考えています。”災害弱者”といわれる高齢者や子ども達、障がいを持つ人々のための施策を最優先にしながら、経済の活性化や交流人口の増などに力をいれなければなりません。コミュニティの絆を強くする工夫も必要です。小学校の運動会が2日(日)、老人クラブ連合会ねんりんスポーツ大会が4日(火)、市民体育祭が9日(日)、小学校陸上記録大会が19日(水)と続き、29日(土)には大口小学校で〝いさのおんがくたい〟のコンサート、そして30日(日)には伊佐市社会福祉大会で今月の主なイベントが締めくくられます。
先々月は東京・神奈川、先月はマカオで伊佐米のPRに精出し、いよいよ今月は新米の収穫です。自信を持って消費者にお届けできるお米をもっともっと宣伝していきたいと思います。関東菱刈会も23日(日)には東京で開催されますので、PRを楽しみにしています。「食」で、そして「風景」でふるさとを自慢できることは幸せです。どの家庭にもおふくろの味があるように、故郷を同じくするものは多くを語らなくても分かり合えるものです。東日本大震災から7か月、ふるさとを離れて暮らす人々のことを思わずにはいられません。「風景は思想」という言葉を今一度思い出し、国民も政治
も全力を尽くさなければならないと思います。
”収穫の盛り”ですから、台風だけは来ないように毎日祈っています。田の神様も水神様も神社もお寺も祈りの聖地です。馬頭観音様も口蹄疫だけでなく伊佐米も見守ってくださっていることでしょう。出雲地方だけでなく、今月は全ての神様がふるさとにおられると思いたいものです。伊佐は風景を大切に、神々を大切にする稲作文化が残っています。焼酎で疲れをとりながら、「だれやめの郷、伊佐市」の豊作を祈りましょう。 ツーリング風の匂ひに秋を知る
父と娘の言葉少なし秋桜
風に聞く明日は何処へ山頭火
離れては文読む夜長月明かり
茜雲黄泉の国へと西の風 -新-
- こんな時には?