被災地に心を寄せて
2012年06月01日
6月の伊佐の風景は日ごとに変わっていきます。伊佐は四方を山々に囲まれ水田の広がる盆地です。夜空の星や月は、山や丘に隠れることなくどこからでも同じように見えるし、朝日や夕日も美しい絵画のようです。このような自然環境の中で整備された水田が何度も耕され、細かで豊かな土の水田へ仕上げられます。やがて水が張られ、すっかり田植えの準備が整います。レンゲ草や飼料作物の緑の水田が茶褐色から雨にぬれて黒くなり、張られた水に青空が映り、6月が終わる頃にはすべての水田に頼りない苗が風に揺れています。この1か月でみるみるうちに変わっていく水田を見ながら、もっとも活気づく伊佐を実感します。日ごろは高齢者と呼ばれている人たちもこの時期は現役に戻ります。病院の待合室とパチンコ店に人が少なくなる月だと揶揄する人もいます。田植えが終わるまでの過程に、何らかのかかわりを持つことは生きがいでもあるようです。この時期の高齢者の方々を見ていると、元気に長生きするにはそれぞれの出番が必要であると感じます。気持ちが前へ前へ動くのでしょう。体力とスピードは衰えていきますが、経験に基づく知恵があります。知識はあってもそれが知恵に昇華しなければ現場・実践では役立ちません。父親の話を素直に聞ける”いい対話”の時間でもあります。
少し5月を振り返っていくつか報告したいことあります。独身の人にとっては5月13日は記念すべき日になりました。異業種の若者が実行委員会をつくり2月から準備を進めていた婚活イベント「いさえん」で、123名の参加者中10組(20人)の〝お付き合いしましょうカップル〟が誕生しました。確率からすると高いと思います。今年度の予算ヒアリングの過程で若い職員と議論をして立ち上げた施策です。若者が自分たちのこととして結婚をまじめに考え、お互いが考えを出し合い意見をぶつけながら準備した〝婚活〟の第1回目でした。今後2~3か月に1回ぐらいずつ催していくそうです。
宮城県南三陸町で伊佐市の職員2名がこの 4月から働いています。その激励も兼ねて先月行ってきました。昨年5月に訪問して以来でしたが、震災後1年以上経過しているにもかかわらず、津波で失われた町の風景はそのままであることを実感しました。しかし、働く職員や立ち上がろうとする商店主と話すと、そこには確実に「明日への希望」と「頑張る気持ち」を強く感じました。この4月に仮設ではありますが2階建ての 町役場庁舎と診療所ができ、町職員の士気も上がり、診療体制も整いつつあるようです。仮設商店街の活動もイベント広場を中心に様々なお店が集まり、プレハブ造りの店舗ではありますが希望の光を感じました。旬の美味しい〝うに丼〟がお勧めです。
宮城県南三陸町や福島県須賀川市など4日間東北に滞在して感じたことは、震災について東京以西に住む国民がどれほど意識しているだろうかということでした。阪神・淡路大震災のときもそうでしたが、月日が経ち被災地から遠く離れると当事者意識が薄らぎます。薄らがないようにどのようにしたらいいだろうかと国民一人ひとりが考えなければなりません。ましてや政治家はなおさらです。マスコミには被災に関するこ とを報道する重要な役割があります。新聞記事やテレビの報道は東北では日常的に耳目に入るが、九州では東北の何分の一の報道しかありません。すべての国民が同じ国民として考えてほしいものです。
出張が続く中で6月議会が始まりました。1日に招集されて、本会議は8・15・18・19・22日に開かれる予定です。ぜひ傍聴に来ていただきたいと思います。補正額は3億1000万円、総額150億3000万円となります。以下に主なものを説明します。
①伊佐市内で新しく生まれた命を祝い、市民全員で喜びを分かち合うために、出産した人に商品券を贈呈します。商品券を利用して子育てに 必要となるベビー用品等を伊佐市内で購入してもらい、新しい命の誕生を祝うとともに地域の振興を図るものです。里帰り出産や市外の人が伊佐市内の病院で出産した場合も対象になります。
②「福島のこどもと過ごそう!わくわく自然体験ツアーin伊佐」では8月中の1週間を、福島の保育園幼稚園年長児および小学生10人程度に、「十曽こどもの森」周辺で自然体験活動をしながら、伊佐市内の子供たちと交流・ホームステイしてもらうものです。
③この3月に閉校となった山野西小学校を文化交流館として再活用するプランも提案しています。恵まれた自然環境の中で文化交流活動を体験する施設として、芸術や文化及び生涯学習に興味を持っている人たちに大いに利用していただきたいと思います。
①については若い消防団員と語る中で、②については長年子ども会育成指導に取り組んでいる方の提案、③はIターンの方々や地元の皆さんの考えを参考にしました。市民との対話の中で、スピード感を持って施策の立案・実行を図ることが大切だと思っています。時と場合によっては慎重さも必要ですが、刻々と変化する社会環境を把握しながら適切な判断のもとにスピード感を出していきたいと思います。
6月から7月にかけては梅雨の季節でもあります。くれぐれも災害のないことを祈りますが、危険や不安を感じるときはまず避難することを第一に考えてください。そのためには日ごろからとなり近所や親戚と連絡を取り合ったり、集落での連絡体制や避難場所の確認をしておいてください。
実りのもととなる田植えや季節を彩る紫陽花には雨も必要ですが、ほどほどの穏やかな雨であることをお祈りしながら今月の挨拶といたします。
漆黒の闇に絵を描く蛍かな
蛍火の一つ点きまた二つ三つ
声そろふ蛙の合唱雨となる
陽を浴びて育つ早苗の水田かな
紫陽花の雨待つ日々の終わる時 -新-
- こんな時には?