伊佐の田園風景
2015年05月29日
6月は、紫陽花の花が一番似合います。花の色は文字どおり’紫’が一番しっくりくる色合いです。私たちが花と思っているのは正確には’蕚(ガク)’だそうですが、難しいことは言わずに素直に楽しめばそれでいいと思っています。この季節になるといつも思い出すのが、佐賀県唐津市相内にお住まいの富永さんのご家族です。平成14年に相知町で開催された”滝サミット”でご一緒して以来のお付き合いです。当時、相内町の担当課長であった富永さんは、観光名所である”見帰りの滝”を、紫陽花が咲き誇る滝として大いに宣伝されていました。曽木の滝にも視察に来ていただいたり、私たちも訪問したりして交流が始まりました。
佐賀や長崎方面に出張した折には、少しの時間ですがお寄りして旧交を温めています。先月22日に諫早市で開催された、九州治水連合会総会の帰りにもお寄りしました。半年ぶりの再会でしたが、日焼けしたご長男の貴博さんの元気な表情に癒されました。畑仕事などにいそしんでいるとのことでした。最近は過去を振り返りながら、人と人との出会いは不思議なものだと思うことが多くなりました。人生は、出会いと別れと言いますが、再会を繰り返すのが人生のような気がします。富永さんから10年前にいただいた数種類の紫陽花も、我が家の庭で大きく咲き誇るようになりました。
6月の伊佐の田んぼは、日に日に変わりゆきます。本州では5月が田植えの真っ盛りですが、伊佐はひと月遅れの6月になります。田が細かな土壌になるまで何回も耕され鋤かれ、水が張られ、早苗が植えられていく一連の流れが伊佐平野の光景です。かつての子どもたちは、その光景を見ながら登下校していましたが、最近は保護者が車で送迎するケースが増えました。このようなふるさとの日々変わる風景を、歩きながら、時には立ち止まり、道草しながら過ごす少年少女時代が、後の人生に大いに影響することを知ってほしいと思います。数年前の関東ふるさと会で聞いた、田植えの季節の思い出の情景に思わず頷きました。
今頃のふるさとの印象深い思い出の情景は、畦道で轢かれていた可哀そうな蛙だったそうです。心優しい子どもであったればこその、幼い頃の強い印象だったと思います。作業をする車には蛙を避ける余裕もなく、あるいは気づきもせず雨の中を忙しく往来していたと思います。蛙は飛び跳ねるので助かる場合もありますが、カタツムリはゆっくり路上を横断するので運に任すしかありません。農道をウォーキングする時気づいたら、「危ないよ!!」と語りかけながら草むらに動かしてやります。農作業が忙しい時季節の情景がすべて”ふるさと”そのものなのです。
一年12カ月の中で、最も伊佐らしいのが6月だと私は思うのです。レンゲ草程度で何にもなかった伊佐平野に、僅か一ヶ月でどの田も早苗が風に揺れるようになるのです。伊佐平野の田んぼが見事に変わって行く様は、フィルムをスローモーションで見ているような、場所を変えて同じことが繰り返されている録画のようでもあります。厳しいことを申し添えれば、牧草や白ネギ、カボチャ以外には、冬から春にかけて田んぼが利用されていないということにもなります。遊んでいる状態です。佐賀から熊本にかけての広大な平野は、麦秋の盛りです。米作が益々厳しさを増すことを誰もが自覚しながら、農業の活路を見つけなければなりません。
6月が最も伊佐らしいということで、伊佐平野を思い出していただくような挨拶になりました。行政としては6月議会の最中となりますが、議会日程の合間を縫っての出張がいくつかあります。県内は、2日に霧島市で姶良伊佐地域農政推進協議会、12日治山林道協会理事会、26日国保連合会幹事会、30日鳥獣被害緊急捕獲対策協議会で鹿児島市に出張します。県外へは、3日から5日は南三陸町を訪問し、9日・10日は東京での全国市長会へ出席します。13日東京、20日大阪は、それぞれの大口高校同窓会に出席します。昨年11月に思い切った大口高校支援策を打ち出しましたので、本旨をご説明しながら、同窓会の皆様にご理解と応援をお願いしたいと思っています。7月の高校進路希望調査の結果が81名を上回らなければ、クラス数が1減となり2クラスになります。なんとしても、大口高校希望者数81名以上を達成しなくてはなりません。
今週発売の週刊朝日に、大口高校のその後を追った記事が掲載されます。先月26日は、大口中央中学校の3年生全員が大口高校を訪問し、4名の高校生のプレゼンテーションに聞き入っていました。授業の様子も見学したようです。伊佐農林高校の活動も、先月伊佐市で開催されました”知事と語る会”において、伊藤知事に現地視察していただき、生徒がピザを焼いておもてなししてくれました。大口明光学園の寮生を激励する催しも、育成会や後援会を中心に盛り上げていただきました。地方創生は、「高校の存続なくしてありえない!」と思っています。
明るく元気に変わりゆく伊佐の姿をこれからもお届けしたいと思います。
麦秋や青き時間の過ぎ去りぬ
紫陽花の色づく声する「雨ですよ」
父の影夕日に長く代田搔く
さざ波に浮き沈みする早苗かな -新-
- こんな時には?