春愁
2020年04月01日
すっかり春めいてきましたが、うきうきした気持ちになれないのが今年の4月です。先々月から日本でも感染者が出始めた新型コロナウィルスが世界を覆うように感染拡大が進んでいます。イベントや旅行のみならず、街への外出も自粛するように要請されているので、花見やスポーツを楽しめない春を迎えています。外出しない予防策は有効ですが、福祉施設等に入所されている高齢で介護の必要な方は、外来からの感染リスクを考えなければなりません。免疫力の低い方々なので、感染すると肺炎を併発したりして重篤化します。リスク管理を考えると、施設職員の方々のご苦労は大変なものでしょう。在宅訪問のヘルパーの方々にも同じご苦労があります。
伊佐市の高齢化率は40%を超えていますので、施設入所者が多い自治体です。入所を待つ待機者はさほど多くないので、在宅と入所者のバランスは取れているものと思います。デイサービスやショートステイの機能を持つ福祉施設も多くありますが、高齢者の日常生活のリズムやペースは保たれているようです。市内ではいくつかのクリニックでドクターがかかりつけ医的な役割をしていただいています。午後からの往診や急な場合の電話相談など、柔軟に対応してくださいます。私は95歳になる母と同居していますので、近くのクリニックで健康相談を兼ねた花粉症や風邪予防等々、定期的に診察をしてもらいます。毎朝の検温も欠かせません。
忠元公園や曾木の滝公園の桜は今年も見事な咲きぶりです。ふれあいセンター通りの桜並木も花吹雪になるまで私たちを楽しませてくれます。桜の季節以外ではまったく目立たない民家等の宅地で目にする一本の木が、この季節になるといきなり目立つようになる桜の木がよくあるものです。それらを見つけた時の驚きと美しさは、名所と呼ばれる桜を愛でるのとは多少違う趣があります。私の朝のウォーキングコースから羽月川(川内川支流)を隔て約500mのところに、平出水淵辺の保食神社境内に数本の桜があります。今年は特別な思いで、鳥居に向かって祈りの手を合わせています。
新型コロナウィルスの及ぼす様々な課題に取り組みながらも、日々の生活の移ろいは季節とともに変化していきます。30ha以上の稲作農業者の種蒔きはすでに始まっています。気温を上げるためにハウスの中で種蒔き・苗つくりをしています。苗が伸びる間に草払いや田んぼの耕うん、土づくりなど伊佐米の美味しさを引き出す準備をします。子牛生産農家は牧草の刈り取りが今月後半から来月前半までがピークとなります。私も家の周りの広い空き地の草払いに追われる週末になります。そのためにはこの時期どうしても好天が続いてほしいのです。
例年なら日曜日ごとに、ご案内をいただいた各自治会の花見に顔を出すのですが、今年はほとんど開催されないと聞いています。同じ自治会の知り合った者同士の花見(集まり)も、国から要請されている人が集まるのを避けることに従っているようです。入学式は市内小・中学校が6日、大口高校・伊佐農林高校は7日、大口明光学園も7日ですが、いずれも来賓として出席いたしません。新年度がスタートしましたので、例年でありましたら各自治会長さんやむらづくり推進委員の皆さんへ行政説明会を行います。今年度は新庁舎建設についても丁寧に説明する予定としていました。しかし、国が示した新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針に、「密閉空間、密集場所、密接場面」という3つの条件が同時に重なるような集まりについて自粛の協力を強く求めることがありましたので、止むを得ず令和2年度の行政説明会は中止としました。
29日に予定されていた東京2020オリンピック聖火リレーも、新型コロナウィルスの感染拡大防止に努めるため、オリンピックの開催1年延期となったことに伴い今年度は中止となりました。聖火リレーコースとして鹿児島県で選ばれた数少ない中の曾木の滝公園でしたので、記念の聖火リレーとなるような思い出を残したいと思っていました。来年の聖火リレーに期待したいと思います。
疫病との戦いは人類の歴史そのものかもしれません。奈良時代には仏教の伝来とともに天然痘が入ってきました。元寇(げんこう)を九州の水際で防いだことがペストの侵入を許さなかったのかもしれません。江戸後期には長崎を経由してコレラが入ってきました。20・21世紀に入ってからもスペイン風邪やエボラ熱、SARS、MERS、そして今回の新型コロナウィルスと続いています。人間の叡智を結集して再び安全な世界を取り戻さなければなりません。
伊佐市も医師会の協力のもと、県立北薩病院としっかり連携を取りながら危機管理に努めてまいります。皆様におかれましてもしっかりとした予防をお願いいたします。
面影を重ねて淡き宵桜
柿若葉磨きし靴の光る朝
陽光に悩みも消えて旅立ちぬ
船旅の便り届きし赴任校
新たなる出会いは偶然縁なりし -新鶏ー
- こんな時には?